久しぶりにがっつりRA.Dを聴くと、否応なしにがっつりと泣きます。今回もそうでした。Ip.o.dさん復活を期に聴けていなかったメドレーをループしたのがいけなかったのも知れない。どうしようもなくどれも好きでした。
そのうち、特に号泣してしまった曲を一曲ループして衝動的に文章を打ちました。思いついたのが車の中だったのでパソコンを開く頃にはちょっと衝動が収まっていてそれがとても残念。気に入ったものは大体衝動のままに書けないと出来ない。今のところそういう意味で気に入ったものが書けたのは一度だけです。
何度か書く度に無性に思うこと。
もっと文章を書けるようになりたい。表現したいことを一番納得の出来る言葉で文章にしたい。上手くなりたい。読んで下さる誰かに伝えたい衝動やら想いやらを伝えられるようになりたい。自分が納得できるものを作りたい。どれも高い目標ですが、どれも日々思っていること。
向上心を持つことは悪いことではないから。
続きに文章。
(腐表現はありませんが、一応CP注意)
ほたる
空が泣いていた。いつか誰かが、夕日は綺麗なほど汚い証だといっていたのを思い出す。そんなの矛盾してるよなあと僕は思って、でもそれほど反論したいわけでもなくただそうなんですか、と返したはずだった。空が泣いていた。零れ落ちる雫のようにきらきらと光る蛍の光は、淡く強くを繰り返して僕の周りを舞っていた。とても綺麗で、思わず片手を伸ばす。触れた一匹が、僕の手をぼんやりと照らす。無性に、泣き出したくなった。「鬼男君。」大王。僕が、返事をする。黒っぽい着物にちかちかと集まる涙みたいな光が、大王を連れて行きそうだと思った。暗くなり始めた空に大王は微笑んで、それから手を高く空に近づける。途端に集まる涙のような光たち。僕の溜息だけが、ほう、と落ちた。「綺麗だね。」僕が頷いた。「はい。」言葉は僅かだった。それで十分だ、蛍はとても綺麗だ。それから、とても、「蛍は、直ぐに死んじゃうんだよ。」輪廻の光に似ているから。「知ってますよそれくらい。」「あ、そう?そうだね、知ってるかあ。」命が廻るのは尊くて、綺麗だ。今もどこかで、誰かの何かの魂が光って廻る。光って、照らして、消えていく。それははじまりの証。蛍は光って、それから命を終えるという。それは僕にとって、とても羨ましいことに見えた。手を伸ばせば、また一匹の光がふわりと僕に集まる。この蛍は、いつまで此処にいられるのだろう。どんな思いで、今僕とこの世界を照らしているのだろう。儚い命の中で、この蛍は大切な相手を見つけたんだろうか。ちかちかと消えかけたと思えば、力強く辺りを白に誘うこの蛍は、光って消えるその一瞬の為に生まれてきた。それは僕達にとって、とても羨ましいことに見えた。隣に居る大王が、蛍を見つめて笑っている。静かに笑っている頬を蛍が照らして、夜に溶け込む大王を救っているようにも見えた。「お、一人身じゃない奴がいる。」白い指が指すところに、二匹の蛍。ああ、そういえば交尾の為の光だったな。頭の隅でちらりとそんな知識を思い出す。蛍相手ににやにやと囃し立てる大王はとても頭が悪い人に見えた。大方事実だけど、まあ、確かに嬉しい光景かもしれない。「良かったですね、コイツ。一人のまま終わらなくて。」短すぎる光の一瞬の中で、誰かを見つけられることはきっととても幸せなことだろう。だけど大王は僕の言葉に眉を寄せて、ううん、と唸った。「そうかな。」大王の手から光が逃げ出して、黒の毛先が夜に混ざる。逃げ出した蛍は、僕の元に集まった。大王が、僕を眩しそうに見る。ああ、この人は神様だ。「私は可哀想だと思うよ。」大王は手を空に掲げてみせる、なのに、光が集わない。黒に包まれたままの大王は、何がおかしいのかずっと笑っていた。僕がそっちへ行けばよいのかもしれない。足が動かないのは、何故だろう。「可哀想。だって、大切なものを残して死んじゃうのは、きっと何より辛いでしょ。」空に向いていた赤の視線が、不意に僕を射抜いた。「…大王は、考え方が暗すぎます。根暗。」「ちょ、酷い!」ふわりとさっきの二匹が、僕と大王の間に飛んできた。漸くはっきりと見えた大王の顔は、どこか水分を含んだ色をしていたから僕は目を逸らす。鏡を見ているようでとても嫌だった。「鬼男君なら分かってくれると思ったんだけどなー。」再び集まり始めた蛍を指に乗せて、トーンの低い声が僕の耳に届く。「残されるほうも、相当辛いんでしょうね?」あ、こっち見た。「なんで俺に聞くのかな?」「大王なら分かるかと思ったんです。」落ちきった太陽の欠片を探して、僕はぐるりと空を眺めた。当たり前に、欠片なんて見つからなかった。「ああうん、そう…そうかも。そうだね。」でしょう、僕は頷いてそれから大王を向いた。大王も、僕を見ている。蛍は変わらず瞬いて、消えるまでの一瞬を美しく飾っている。「蛍の話、ね。」「ええ、蛍の話です。」残すほうも残されるほうも、どちらも悲しいのだろうな。僕には前者の気持ちしか分からない、けれど、それまでの日々を過ごす蛍は綺麗でやっぱり僕達にとってとても羨ましいことだろうと思った。一際大きく輝いた光が、力をなくしたようにじんわりと闇に消えていく。明日にはいくらか消える無数の光は、その事実も知りながら尚、無性に綺麗に夜と僕と大王を照らして、輪廻を廻るのだ。無性に、泣き出したくなった。
僕は蛍になりたい。